第 2 部・基本の編集 / 2.2

移動・選択・クリップボード

カーソルの動き、選択の広げ方、クリップボードの位置。Erya ならではの 2 点——Unicode の書記素クラスター単位での移動と、文字で埋めたりまとめて動かせる矩形選択——も含みます。

所要時間 約 14 分 対象 すべての利用者 前提知識 1.3 バージョン v1.0 ・ 2026-08-26
2.2.1

カーソル移動のキー一覧

矢印キーのグループは固定で、変更できません。

キー操作補足
↑ ↓ ← →カーソル移動固定キー。左右は 1「文字」単位で、バイト単位ではありません(2.2.3 参照)。
PageUp PageDown1 ページ上下固定キー。1 ページ=内容領域の高さ。
Home End行頭/行末固定キー。
Ctrl+A Ctrl+E行頭/行末変更可。Home/End が押しにくいキーボード向け。
Ctrl+Home Ctrl+End文書の先頭/末尾固定キー。
Ctrl+G行/列へ移動2.2.2 参照。
  • 行末で → を押すと次の行の先頭へ、行頭で ← を押すと前の行の末尾へ移ります。
  • 上下に動くとき、元の列を覚えています。短い行を通り過ぎて長い行に戻ると、元の位置に戻ります。
  • 行がウィンドウより広いと、右へ動くにつれて横スクロールします。折り返しを切っているときによく見られます(2.2.9 参照)。
いま何行目か知りたいときはステータス行

下から 2 行目に 行:列 が常に出ています。「カーソル位置を表示」という操作もありますが、既定ではキーが割り当てられていません。ステータス行に出ているからです(4.4.6 参照)。

2.2.2

行と列を指定して移動

Ctrl+G。行番号だけでも、「行:列」でも構いません。

Enter 確定 Esc 取消 ←/→ カーソル移動 Backspace/Delete 削除
行/列へ移動(例:42 または 42:8):120:16
  • 42 なら 42 行目の先頭へ。
  • 42:8 なら 42 行目の 8 文字目へ。
  • 行番号が文書より大きければ最終行で止まり、列が行より長ければ行末で止まります。
  • 形式が不正(負数や英字)なら「位置の形式が正しくありません。正の行番号または 行:列 を入力してください」と出て、もう一度尋ねます。
  • 成功すると「120 行 16 列へ移動しました」と報告します。
コンパイラーのエラー位置はそのまま貼れます

error[E0308]: src/main.rs:120:16 のような出力なら、120:16 を Ctrl+G に入れれば到着します。16 進数表示でオフセットへ飛ぶのも同じキーです(3.3.4 参照)。

2.2.3

「1 文字」ずつ動く

Erya の単位は Unicode の書記素クラスターです。バイトでもコードポイントでもありません。

普段は意識しませんが、次の場面で差が出ます:

内容← 1 回で他のエディターでありがちな挙動
漢字「漢」1 文字ぶん移動おおむね同じ
絵文字 👨‍👩‍👧‍👦ひとかたまりで移動構成要素ごとに進み、止まって見えたり崩れたりする
結合文字(濁点など)1 文字ぶん移動本体と分離してしまう
肌色修飾子 👍🏽ひとかたまりで移動修飾子だけ外れて 👍 が残る

削除・上書き・選択も同じ単位なので、Backspace 1 回で消えるのは目に見えている 1 文字であり、半端な残骸は生じません。

「列」と「画面上の桁」は別物です

ステータス行の 行:列 は何文字目、画面上の位置は何桁目です。全角は 2 桁、タブはタブ幅に展開されます。したがって全角だけの行の 5 文字目は画面上の 9 桁目にあります。Ctrl+G に入力する列はステータス行と同じ「文字数」です。

2.2.4

通常の選択

Shift を押しながら移動するだけです。

第一章 プロジェクトの背景   本プロジェクトは二〇二六年三月に始動しました。   既存の文書をプレーンテキストへ変換します。
報告.txt │ 3:20 │ 選択 │ UTF-8 │ LF
7 文字を選択しました
  • Shift はすべての移動キーと組み合わせられます:矢印、Home/End、PageUp/PageDown、Ctrl+A/Ctrl+E。
  • 逆方向へ動かすと縮みます。選び直しにはなりません。
  • 選択範囲は灰地に黒で、複数行にまたがれます。
  • ステータス行のモードが 選択 になり、メッセージ行が文字数を報告します。
  • Esc で解除。そのまま入力すると選択範囲を置き換えます。
「すべて選択」はありません

Erya に 1 キーの全選択はありません。Ctrl+Home で先頭へ移動し、Ctrl+Shift+End を使ってください。ターミナルがその組み合わせを送れない場合は Shift+PageDown を何度か押します。(Erya の Ctrl+A は「行頭へ」で、全選択ではありません。)

2.2.5

矩形選択

長方形の選択。桁のそろった表やコードに向いています。

No. 品名 数量 単価 001 モニターアーム 2 1280 002 キーボード 1 3200 003 マウスパッド 5 180
注文.txt │ 4:5 │ 矩形選択 │ UTF-8 │ LF
12 文字を矩形選択しました
  1. Ctrl+B で起点を決めます。メッセージ行に「矩形選択を開始しました;矢印キーで範囲を広げます」と出ます。
  2. 矢印キーで長方形を描きます。上下が行、左右が桁を決めます。
  3. もう一度 Ctrl+B(または Esc)で解除します。

矩形選択も切り取り・コピー・貼り付け・削除ができ、さらに専用の操作が 2 つあります(埋める・動かす、2.2.6 参照)。

矩形選択と折り返し表示は同時に使えません

折り返すと 1 行が複数行に分かれ、「何桁目」が意味を失うため、両者は排他です:

  • 矩形選択中に Ctrl+L:「矩形選択中は折り返し表示を有効にできません。先に矩形選択を解除してください」
  • 折り返し中に Ctrl+B:「折り返し表示中は矩形選択を使用できません。先に折り返しを無効にしてください」

Ctrl+L で折り返しを切ってから矩形選択を始めてください。

2.2.6

矩形を埋める・動かす

とても便利ですが、既定ではキーが割り当てられていません。

操作名Classic でのキー内容
fill_rectangleAlt+F文字を 1 つ尋ね、矩形範囲全体をその文字で埋めます。区切り線や桁揃えに便利です。
move_rectangle_leftAlt+Shift+←矩形の中身をまとめて移動します。方向ごとに 1 操作。端に来ると「矩形選択範囲をその方向へ移動できません」と出ます。
move_rectangle_rightAlt+Shift+→
move_rectangle_upAlt+Shift+↑
move_rectangle_downAlt+Shift+↓
既定プロファイルではこの 5 つが空です

Alt 組み合わせと修飾付き矢印は多くのターミナルに届かないためです(1.3.9 参照)。使うには Erya Classic に切り替える(F2 で選ぶだけ)か、押せるキーを自分で割り当てる(4.1.4 参照)かのどちらかです。それまでは F1 ヘルプでキー欄が空欄になります。

先に選択、それから操作

矩形選択が無い状態で埋めようとすると「先に矩形選択範囲を作成してください」と出ます。順序は Ctrl+B →矢印キー→操作キーです。

2.2.7

切り取り・コピー・貼り付け

選択が無いとき、切り取りとコピーは「現在の行」が対象です。

キー選択あり選択なし
Ctrl+C選択範囲をコピー1 行まるごとコピー
Shift+Delete選択範囲を切り取り1 行まるごと切り取り
Ctrl+K現在の行を切り取り(選択の有無を問わず)
Ctrl+V / Shift+Insert貼り付け。選択があれば置き換えます
Ctrl+D現在の行を削除(クリップボードには入りません)
Erya のクリップボードはシステムのものとは別です

Ctrl+C でコピーした内容はErya の中だけにあります。タブ間では使えますが、ブラウザーには貼れません。逆も同じで、他のプログラムから持ち込むにはターミナル自身の貼り付け(macOS は ⌘V、Windows Terminal や多くの Linux 端末は Ctrl+Shift+V、マウス中ボタン)を使います。Erya は bracketed paste に対応しているので、その方法で入った文字列は 1 回の貼り付けとして扱われ、「N 文字を貼り付けました」と報告されます。

Erya から外へ持ち出すとき

マウスで選択してターミナル側のコピーを使います。これはターミナルの機能なので、その行にある他の要素も一緒に選ばれます。ステータス行をまたがないようにしてください。

2.2.8

行の切り取りと挿入/上書き

毎日使う小さな操作が 3 つ。

行の切り取りと削除

  • Ctrl+K は現在の行を切り取り、クリップボードに入れます。連続して押せば複数行を移動できます。
  • Ctrl+D は現在の行を削除し、クリップボードには入れません。コピー済みの内容はそのまま残ります。
  • どちらも Ctrl+Z で戻せます。

挿入と上書き

  • Insert で切り替えます。モードのマスが 挿入 と 上書き で入れ替わり、メッセージ行にも「上書きモードに切り替えました」と出ます。
  • 挿入:入力すると後ろが右へ動きます。既定。
  • 上書き:入力するとカーソル位置の文字を置き換えます。桁のそろった表の数字を直すときに便利です。
Mac のキーボードには Insert がありません

対処は 2 つ。キーマップエディターで toggle_insert を別のキーに割り当てるか、Insert と Alt+I の両方を割り当てている Erya Classic に切り替えるかです(4.1.2 参照)。16 進数表示のバイト編集には専用の I キーがあります(3.3.7 参照)。

インデントの引き継ぎ

Enter で改行すると、Erya は現在行の先頭にある空白とタブをそのまま引き継ぎます。YAML やコード、箇条書きを書くときに毎回入れ直す必要がありません。不要なときは Backspace で消してください。

2.2.9

よくあるつまずき

移動と選択で多い 6 つです。

症状原因と対処
Ctrl+A で全選択できないErya では「行頭へ移動」です。全選択の操作はありません(2.2.4)。
Ctrl+C で中断できないコピーです。終了は Ctrl+X(1.1.7)。
行の後半が見えない行がウィンドウより広いだけです。Ctrl+L で折り返すか End で横スクロールします。
Ctrl+B が折り返しを理由に断られる両者は排他です。Ctrl+L で折り返しを切ります(2.2.5)。
矩形の埋める・動かすが効かない既定でキーがありません。Classic に切り替えるか自分で割り当てます(2.2.6)。
ブラウザーからコピーした文字が貼れないErya の Ctrl+V ではなく、ターミナルの貼り付けを使います(2.2.7)。